学園のモニュメントの設計
今年の最後の仕事として県内の学園のモニュメントの設計が無事完了しました。
昨年この仕事の依頼があった時、ちょっと興奮した。卒業生の寄付金で集めたお金で、70周年記念事業として学園の理念がシンボルになるようなモニュメントを創ってほしい、との依頼であった。私達はこれこそ設計者としての実力を問われる仕事だ。制限の無い自由な造形を心行くまで推考でき、まさに設計冥利に尽きる条件として受け止めた。
事務所内でかなり力が入り、たくさんの提案があった。しかしなかなか1つの方向性が見つからなく、第1回目の打ち合わせは結局2つの案を提出することになった。1案は形而学的というか、幾何学的な案を模型で提示した。もう1案はむしろ造形的な案でCGで提案した。いずれも好評であり、わが社の信頼感を得るには充分な提案であったが、理念の表現として一致を見るまでにいたらなかった。
幸いなことに、この学園には第三教育と呼ばれる明確な理念があった。始めの頃、私達はこのことが良く理解できていなかった。何案か提出しながら打ち合わせを重ねるうちに、学園側に何かイメージのようなものがあると分かった。何度目かの提案のあと、美術の先生からFの字を上下に重ねた断面の柱なかに丸棒を組み合わせたような不思議な模型を見せられ、「これが第三教育の理念です。外側は第1の家庭の教育、反対側は第2の教師の教育、真中は第3で自ら進んで学ぶ教育である。」と説明された。
たしかにそれは建築物としては問題のある案だが、その形は依頼者がどのような教育を目指しているかを明確に語っていた。 この時、私達は不覚にも、依頼者である卒業生や学園の総意ではなく、自分のオリジナルを、別の言い方をすれば自分の作品を創ろうとしていたことに気づかされた。もちろん次の打ち合わせにはその理念に即した形を提案した。それからは肩の力が抜けたように学園との話もうまく進み、どんどん写真のような形になった。完成したモニュメントは私達の造形的な気持ちとしては不満の部分もあるが、集団の求める形の方向性と力強さは間違いでないと思う。また、落成レセプションで皆に感謝されたことにとても満足している。