南イタリア・車で周遊<アグリジェント~ラグーサ>
翌朝テラスでまどろんでいると、SINさんが走ってきて庭に連れ出された。なんとホテルの屋根越しに神殿の谷を見上げると右から左に一望に出来て、素晴らしく壮観である。多分夜にはライトアップされていたはずであり、このホテルはこの景色を意図して造った建物であるに違いない。情けないことに、僕たちは建築家なのに着いた時も夜もこの意図にまったく気がつかなかった。
今日は見学場所が多いので、予定していたカザーレのローマ時代の離宮は工事中らしい噂もあり外し、海岸沿いのジェラを経由して内陸のカルタジローネに向かった。

カルタジローネは中世までアラブの砦であり、震災の後17Cにバロック様式の建物が街の中心に再建されたようだ。しかし、どう考えても山岳都市である。山下のあたりの駐車場を探さねばならない。街中に入る案内板を下るとバスが停まっている広場が有った。少々遠くてもこんな街で駐車場を探して迷いたくない。車から降りて見あげると、何とか登れそうな階段が見える。夏の日差しの中を覚悟を決めて登ると目標になりそうな古い教会に出た。前の道を真直ぐ登ると中心広場に出るようだ。この街は古くからマジョルカ焼きとして陶器が有名である。中心広場がバロック様式の新しい建物に囲まれているようだが、広場から真直ぐ北に登る長い幅広の階段には蹴上げに美しい絵タイルが組み込まれている。座るには快適だが、頂上のカテドラルまで登るには相当な体力を要する。

皆は頂上まで登りたいと言ったが、僕はちょっとうんざりして、これを登るのを諦め、駐車場の近くの教会で待合わせる事にした。この街の工芸的技術は素晴らしく、お爺さんが丁寧に商品を磨いて並べている陶器屋を覗くと何ともユニークな魚の壁掛けが気になって、2つで15ユーロと値引きをしたら、肩をすくめて「マ ベーネ」と包んでくれた。BARでコーラをもらって宝石店などを覗きながらさらに下ると、彫刻家の工房らしいほこらのような店を見つけた。「ポッソ エントラーレ(入ってもいいですか?)」書類を書いていたオーナーがメガネ越しに入れと合図した。中は意外と大きく、モダンな彫刻から明らかにお土産用作品と思えるものまで雑然といっぱい並んでいた。しかし、奥にはなかなかの力作が多く、「良い作品がありますね。」と声を掛けると、「何処から来た?」と聞かれ、「日本の建築家だ。」と答えると嬉しそうに手招きして、中央広場の彫刻が載っているパンフレットをくれた。これは自分の作品でフリッポ・ロマーノと名乗り、ミラノかローマに本拠地が有ったらもっと大きな仕事が出来るのにと、愚痴りながらも自分のリーフレットにサインをしてくれた。日本に行きたい思いと尊敬するイサム・ノグチと京都の話をしながらコーヒーを入れてくれた。

坂下の教会に着くとまもなく、皆が息を切らせながら階段を降りて来た。SINさんも含め女性達はまったく元気である。再び、車に戻り、出発した。この街は侵入路が少ないので脱出もスムーズだった。しかし、山道は標識に頼らざるを得ない。何とか国道N515に合流するとしばらく快適な道だった。大きなロータリーを左折するとすぐにラグーサに入った。さて、何処に駐車すればよいのか。道は谷に向かって下っている。案内書ではこの街は深い渓谷に囲まれ、震災復興で東西それぞれ異なる街造りが進められた。西の谷は方丈に区画されバロックのサンジョバンニ大聖堂を中心に近代的に再建され、東の谷はイブラと呼ばれアラブ風の古い街並を残して発展したらしい。僕たちは区画整理のされた西の谷から中心に向かっているようだ。

右にサンジョバンニ大聖堂が現れ、向かいの郵便局前の駐車場に何とか駐車出来た。大聖堂の前に大きなテラスがありこの街の中心のようだ。しかし、観光客は見当たらない。その道を真直ぐに下るとさすがに区画整理が乱れ、中心の崖が近づいた事が分る。つづれ折れに曲がると正面に突然に蟻塚のような東の谷が現れた。それは壮観な姿だが、僕たちの車では登れそうもない。設計屋の僕としてはどうしてもイブラの蟻塚のような街に魅力を感じるが、そこに住むのとは別の話だ。時間の余裕があったらぜひとも歩いて登りたい景色だが、夕方までにはシラクーサまで行かねばならない。

しばらく茫然とたたずみ、そして食堂を探した。こんなにも素晴らしい絶景であるのに、レストランや休憩場が無いのが不思議だ。しかたなく中心街まで戻り気がついた。今日は日曜日だから閉まっているのだ! さすがにイタリアの田舎街だ、安息日に働いてはいけないのだ。ほぼ諦めかけた時、手書きのレストランの看板と矢印を見つけた。ホテルの食堂のようで、細い路地に白いテントと、椅子とテーブルが並んでいる。誰もいないので覗くと中に入れと手招きされた。グラマーな黒いミニスカートのお姉さんが金髪を掻き上げて注文を取りに来た。ちょっと嬉しくなってサラダとピザとスパゲッティー注文した。
アグリジェントのライトアップされた夜景が見られなかったのとラグーサのイブラ地区を歩けなかったのは残念だったね。カザーレの離宮は外したのに
やはりスケジュールがきつかったか。
コメント by shinichi — 2009年8月11日 @ 3:17 PM
夜景を見れなかったのは
本当に悔しかったね。
スケジュールは確かにきつかった。
しかし、こんな旅は何度も出来ないから
仕方ないのかもしれない。
それも含めて楽しい旅であった。
と思うよ!
コメント by boss — 2009年8月11日 @ 6:07 PM